「融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論」を読みました
- 作者: 渡邊恵太
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2015/01/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本を読みました。手に取った理由はエンジニアとしても最低限デザインに関して学びたいと相談したときに、同僚のデザイナにおすすめされたためです。
追記: この本に関連したLTも行いました。 ngmt83.hatenablog.com
概要
概要に関しては1章の終わりに書かれていました。
本書は、多少のエンジニアリング的内容と、多少の現象学的、心理学的内容を混ぜ合わせた「設計の発想」の本である
実際に、技術的な視点・心理学的な視点など複数の視点から設計のヒントを与えてくれるエンジニアにもおすすめできる良書でした。
何がよかったか
人によって定義がぶれたり曖昧な言葉を適切な用語で捉え直せる
考える対象やその概念がぼんやりしていては、何も進まないので捉え直せたことは非常にありがたかったです。本書に登場する主要な用語は以下の通りです。
個人的には、アフォーダンスに関して大学で学んだときの理解を深め、腹落ちまでできたのが特によかったです。上述の用語に興味が湧いた人はぜひ読みましょう!
気持ちいいデザイン・インターフェイスがなぜ気持ちいいかを具体例と理由を添えて説明してある
プロダクトのレビュをする際に「いい感じ」or「なんかダメ」といった主観的な感覚に基づくものではなく、具体的に言語化されたレビュをできるようになったと感じています。
本書には以下のような例示が登場しますが、道具・道具とコンピュータ・サービスなどの各レイヤにおいて例示・説明してあるため理解が捗りました。
印象的だった箇所
万能性を一般の人々にそのまま提供しても、「何でもできます」では何も提供していないことと同じである
よく機能がありすぎて結局何ができるのかわからないプロダクトを見るし、自分で生み出してしまうこともあるので、胸に突き刺さりました。コンピュータの万能性を語る文脈でしたが、確かに何かやりたい人に対して「これで実現できるよ」とコンピュータを渡しても何も提供していないに等しいですね。
人にとってはインターフェイスがすべて
バックエンドエンジニアをメインにやってきた私はインターフェースの質が低くとも「最低限動くからいいや」と思ってしまうことがたまにあります。しかしそれはいけないなと再認識させてくれました。
最も完全な技術とは、表面に出てこない技術である。日常生活という織物の中に完全に織り込まれてしまっていて、個々の技術自体が私たちの目に見えなくなっているものだ
高度に抽象化されたライブラリやFrameWorkを使用しているときにも強く感じます。自分でコーディングするときも常に頭においておきたいです。また、サービスについても同様に「最も完全なサービスとは、表面に出てこないサービスである。日常生活という織物の中に完全に織り込まれている」と言えると思います。
テクノロジーの可能と、「人の可能」はレイヤが異なる。テクノロジーが可能だからといって、人がやるとは限らない。「できる」と「やる」は違う
テクノロジーの可能をいかにして人の可能に落とし込むか、人がやれる状態に持っていくかは難しいからこそやりがいがあるよなあと思いました。「できる」の先に「やる」があることを意識したサービス作りを当たり前にできるようになりたいです。
おすすめの読み方
1,2章をしっかり読んで7章も読みましょう。3~6章はさらにブレイクダウンした内容になっています。余裕があるときに読んで理解を強く・深くするくらいでいいと思います。
総括
本書内の素敵な表現を引用して総括といたします。
デザイン思考の考案者でもあるティム・ブラウンは、「デザインをデザイナーに任せておくには重要すぎる」と言ったそうだが、同様にプログラミングをプログラマーに任せておくには重要すぎるとも思うのだ
エンジニアとデザイナの役割に固執せず、越境しながらよいプロダクトを作っていきたいですね。